GPFI「デジタル金融包摂のためのG20のハイレベル原則」

GPFIが公開しているレポートをご紹介いたします。


G20 High-Level Principles for Digital Financial Inclusion(PDFファイル)


デジタル金融包摂を促進していくためのハイレベルな原則を概説したレポートで、以下の8つが提唱されています。

  • 原則1:金融包摂に対するデジタルなアプローチの促進
  • 原則2:デジタル金融包摂を達成するためのイノベーションとリスクのバランス取り
  • 原則3:デジタル金融包摂を可能にする均整の取れた法規制の枠組みの確立
  • 原則4:デジタル金融サービスのインフラ生態系の拡大
  • 原則5:消費者保護のための責任あるデジタル金融プラクティスの確立
  • 原則6:デジタルと金融のリテラシーと意識の強化
  • 原則7:デジタル金融サービスのための顧客IDの促進
  • 原則8:デジタル金融包摂の進捗管理


24ページには、今回の原則と2010年時点のG20原則との対照表が用意されています。


GPFI「グローバルな基準設定機関と金融包摂:展開しつつある展望」
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160403/1459686456

デジタル金融サービスを利用した詐欺の防止

Felix Instituteによるブログの記事を2点ご紹介いたします。


Fighting DFS Fraud from Five Fronts
http://www.helix-institute.com/blog/fighting-dfs-fraud-five-fronts

Working Together To Fight DFS Fraud
http://www.helix-institute.com/blog/working-together-fight-dfs-fraud


デジタル金融サービス(DFS)は新しいビジネスであり、事業として未熟なものであるがゆえの課題が多くあります。

利用する側(消費者)のリテラシーはあまり高くないでしょうし、提供する側(金融サービスプロバイダー)も堅固な体制を敷いているわけではないことが予想されます。


こうした状況のもと、悪意を持った者による不正利用を防ぐための手段として、1番目の記事は以下の5つを取り上げています。

  • 消費者に対する教育キャンペーンの継続的な実施
  • 内部システムとプロセスの改善
  • 職員と代理店ネットワーク管理の改善
  • 商品設計における詐欺の発生の考慮
  • 規制の施行と犯罪者に対する訴追の強化


以前ご紹介したデロイトのレポートが参照されておりますが、こうした詐欺を予防するために、コンサル会社が持っているノウハウを活用できるかもしれませんね。


Deloitte「モバイルマネー業界の新たな詐欺リスクを緩和する」
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20150830/1440939423

Microsave「モバイル金融サービスにおける詐欺」
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20150315/1426410237

CGAP「WAEMUにおけるデジタルファイナンス」

CGAPによるブログの記事をご紹介いたします。


Digital Finance in WAEMU: What’s New?
http://www.cgap.org/blog/digital-finance-waemu-what’s-new


WAEMUは、西アフリカ経済通貨同盟の略で、以下の国がメンバーです。


これらの西アフリカの国々では、デジタル金融サービスが少しずつ普及してきているものの、低所得層の人々には十分に届いていないのが現状です。

様々な要因のうち、政治的な意思(political will)が根本原因とみなされていることが印象に残りました。


ガーナは該当しませんが、WAEMUのデジタルファイナンスに対するインタビュー調査の結果をまとめたレポートが公開されているようですので、改めて取り上げたいと思います。


ガーナのモバイルマネーに対する社会調査
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20150329/1427618536

Correspondent bankingとde-riskingを知るための文献一覧

de-riskingとの関連で、correspondent bankingについて知るための文献を5点集めてみました。

融資や外為の仕事をしている銀行員なら誰でも知っている言葉ですが、外の世界で浸透しているとは言い難く、de-riskingについて理解を深めるための一助となれば幸いです。


CPMI “Correspondent Banking”
http://www.bis.org/cpmi/publ/d147.pdf


FATF “FATF Guidance: Correspondent Banking Services”
http://www.fatf-gafi.org/media/fatf/documents/reports/Guidance-Correspondent-Banking-Services.pdf


World Bank “Withdrawal from Correspondent Banking: Where, Why, and What to Do About It”
http://documents.worldbank.org/curated/en/113021467990964789/pdf/101098-revised-PUBLIC-CBR-Report-November-2015.pdf


IMF “The Withdrawal of Correspondent Banking Relationships: A Case for Policy Action”
https://www.imf.org/external/pubs/ft/sdn/2016/sdn1606.pdf


IFC “Correspondent account KYC toolkit: A Guide to Common Documentation Requirements”
http://www.ifc.org/wps/wcm/connect/dfb227004ec4ea109697bf45b400a808/correspondent+account+kyc+toolkit.pdf?mod=ajperes


de-riskingに関する文献
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160117/1453012121

IFAD・世銀「資金移動と金融包摂」

IFAD(国際農業開発基金)と世界銀行が公開しているレポートをご紹介いたします。


Transferts d’argent et inclusion financière(PDFファイル)


章構成は以下の通りです。

1. イントロダクション
2. 全般的な傾向
3. 資金移動の送り手と受け手の金融上のニーズと金融包摂への妨げ
4. 市場における供給と競争:アクターと資金移動の利用者の必要から生まれる機会
5. 資金移動の市場における規制の枠組みと環境
6. 基礎的な金融サービスを超えて:祖国に帰還する移民に対する投資の強化
7. 政策と勧告の精緻化のための指導方針


本レポートが特に注目するのは、国際送金の主要なアクターとして、国境を行き交う移民(migrants)がやりとりする資金の経済的なインパクトの大きさです。

移民による国際送金が持つ経済的な効果が、国家(マクロ)・コミュニティ(メゾ)・家計(ミクロ)という区分にしたがい分析されています(p.p 11-12)。


さらに、供給サイド・需要サイドという分類により、資金移動の受け手と送り手が金融包摂の恩恵を受けるための障害が整理されています(p. 39)。



そのうえで、市場ベースで資金移動を活性化するための方策として、以下が挙げられています(pp. 40-46)。

  • 資金移動の市場における競争の促進
  • イノベーションの促進
  • 透明性の促進に加え、消費者保護と送金業者の良き統治の確立


資金移動業者にとっての今日の大きな問題であるde-riskingが、英語のまま紹介されているところが印象に残りました。


移民や送金ビジネスについて勉強中の身ではありますが、付せんを立てた箇所は以下の通りです。

  • 巡回型移動(migration circulaire)(p. 6)
  • 送金業者 (PST: Prestataire de services de transfert d’argent)(p. 7)
  • 送金特化型銀行(banques spécialisées)(p. 7)
  • 資金の送り手の国と受け手の国がそれぞれ評価すべきこと(p. 52)

世銀「De-riskingについての会談」

世界銀行が発行しているレポートをご紹介いたします。


Stakeholder Dialogue on De-risking Findings and Recommendations(PDFファイル)


本レポート独自の分類ではありませんが、de-riskingの影響を特に受ける対象として、以下の3つが挙げられています。

  • Correspondent banking
  • Charities/non-profit organizations
  • Remittance companies/Money Services Businesses (MSBs)


知識不足のため、人道援助分野のチャリティやNPOに関しては何も語るものはありませんが、お金の移動の観点から開発に関係する送金業者やマネーサービスビジネスには強い関心があります。

現在進行しているde-riskingに対する議論が簡潔に整理されており、日本語の情報は皆無に近い状態であるため、ご興味のある方は目を通されるといいと思います。


付せんを立てた箇所は以下の通りです。

  • 金融機関によるリスク回避というde-riskingの定義に対し、多くの銀行は、案件ごとに(case-by-case)判断しているとこれに反発した(p. 1)
  • correspondent bankingはひとつの公共財(a public good)であり、公的資金や権力がこれを保護しなければならない(p. 5)

next billion「インドとパキスタンのデジタルIDシステム」

next billionのブログを興味深く読むことができましたので、共有させていただきます。


India vs. Pakistan: The Pros and Cons of Two Radically Different Digital ID Systems
http://nextbillion.net/india-vs-pakistan-the-pros-and-cons-of-two-radically-different-digital-id-systems/


インドとパキスタンで、大きく異なるデジタルIDシステムが普及しつつある状況を踏まえ、それぞれの長所と短所が考察されています。

以前の記事でも書いた通り、開発途上国を中心に、デジタル技術を利用してこうしたIDシステムを整えていこうとする動きがあります。


様々な場面で提示が求められるパスポートや運転免許証などのIDは、多様なサービスを受けるための社会の根本的なインフラといえます。

金融機関はごく一部の利用者に過ぎませんが、あらゆる取引に先立って、顧客に対しIDの提示を求め、本人確認(KYC/CDD)を実施することが実務上必要です。


記事では、ある国にふさわしいIDシステムを選択するために考慮すべきものとして、以下の要素が挙げられております。

  • 人口
  • 人口密度
  • 政治環境
  • 電化の程度
  • インターネット接続性
  • 政府の関与


金融サービスの普及にも密接に関わりそうなところであり、インドやパキスタン以外でのデジタルIDの状況についても知りたいと思いました。