IFC・マスターカード財団『デジタル金融サービスにおける数々のイノベーション』
IFCとマスターカード財団によるファイナンシャルインクルージョンのためのパートナーシップが公開しているレポートをご紹介いたします。
"In The Fast Lane: Innovations in Digital Financial Services"(PDFファイル)
モバイル金融サービス(MFS: mobile financial services)より幅広い概念であるデジタル金融サービス(digital financial services)を取りあげ、より効果的で多様な金融サービスのポートフォリオを届けるため、モバイルマネーやデジタルペイメントに関わる幾多のイノベーションが進化していく様子をとらえようとするレポートです。
1章「ミッシングリンクとしての流通」の冒頭では、アフリカのインフラの乏しさに起因する金融サービスの流通(distribution)上の問題が挙げられています。
- 代理店の流動性
- 相互運用性
- 詐欺とネットワークの停止
- 信頼
- 口座開設の手続きの遅さ
これらの欠けている部分(the missing link)を補完するため、携帯電話から写真をとること(mobile imaging)による本人確認・指紋や音声による生体認証(biometrics)・代理店管理のためのアプリやモバイルハンドセットといったイノベーションを利用することができるとのべられています。
2章「バックオフィスのイノベーション」と3章「プロダクトのイノベーション」も同様に、不完全なものにとどまっているバックオフィス業務やプロダクトをイノベーションによって効率的なものにしていこうとする内容です。課題とされているのは以下の6つです。
- システムの統合
- 商人による価値の提案(merchant value proposition)
- 提供されているプロダクトの乏しさ
- 不適切なAPI
- 規制
- 予算の制約
これらの障壁を乗りこえるために、様々なイノベーションの利用が提案されています。
- 標準的なAPIやクラウドの活用
- モバイルマネーとカードで利用できるオンラインペイメント
- 与信判断(credit decision)のためのビックデータやデータ分析
- オンデマンドのマイクロクレジット
- クラウドファンディングによるファイナンス
NFCが一時期より下火になったように、現場で使われることでこれらの技術は淘汰され、金融サービスの提供者や顧客にとりより望ましい方向で進化していくことでしょう。
ここでは割愛しましたが、レポートの本文では、具体的なサービス名とともに各地の事業が大量に取りあげられています。
サブサハラアフリカをはじめとする様々な地域で起こりつつある現実の事例を読みといていくことで、最先端の技術が「低収入の人々がはじめてフォーマルな金融セクターに参加することを可能にするだけでなく、多国籍企業やアフリカの企業にとってのビジネスの機会をも提供する生態系(ecosystem)」(p. 3)を築きあげていく様子を一望することができます。