pwc『2020年のリテールバンキング――進化か革命か?――』

プライスウォーターハウスクーパースが公開しているレポートをご紹介いたします。


Retail Banking 2020: Evolution or Revolution?(PDFファイル)


2020年の銀行業界を予見し、それまでに経営がなすべきことを提言するレポートです。

現在勃興しつつあるグローバルでマクロな動向として、以下の6点が挙げられています。

  • 国家が指揮する資本主義の隆盛
  • 技術はすべてを変える
  • 成長のための優先事項と機会を変える人口分布
  • 社会的かつ行動上の変化
  • こうした未来にいたるまでの潜在的な障害
  • 進化と障害――変化の責務――


こうした動向を踏まえ、2020年までに優先して取りくむべき課題として、次の6点が提出されています。

  • 顧客中心のビジネスモデルを構築する
  • 配分を最適化する
  • ビジネスと業務のモデルを単純化する
  • 情報上の優位を獲得する
  • イノベーションとそれを育む潜在性を促進する
  • 先を見越してリスク・規制・資本を管理する


「配分を最適化する(optimising distribution)」(p. 25)では、近い未来、営業店によるサービス提供(branch banking)という従来のモデルが変革される必要が描かれています。

先立って大きな変化に直面した音楽・映画・出版業界のみならず、銀行業界もデジタルな配分(digital distribution)という流れに対応することが重要であるそうです。

アフリカや中南米をはじめとする新興市場の重要性が強調されていることに加え、銀行を利用できない人へのサービス提供(banking the unbanked)やファイナンシャルインクルージョンへの言及もみられます。


レポート全体を通じ、開発途上国や新興勢力(non-traditional players)の存在感が高まるなかで、銀行業界がこうした潮流に乗っていくことを提案しています。

マイクロファイナンスが想起させる貧困削減やチャリティといったイメージから離れ、ビジネスとしてのフォーマルな金融という観点から銀行が新たな経営課題に向きあっていくことを説くレポートとして、興味深く読むことができました*1