世銀『携帯電話を利用した金融サービスの完全性』
世界銀行のワーキングペーパーをご紹介いたします。
Integrity in Mobile Phone Financial Services(PDFファイル)
2008年の段階で、携帯電話を利用した金融サービスは、ユニークな経済開発上のポテンシャルを持つものと認識されておりました。
他方で、当初からマネーロンダリングやテロ資金供与への悪用が懸念されており、モバイル金融サービスがそうした金融犯罪に使われてしまうリスクを削減するための手段を提示したレポートです。
AML/CFT上、携帯電話を利用する金融サービスには以下のリスクがあります(pp. 11-13)。
- アイデンティの不明(unknown identity)
- 偽造ID(false identification)
- スマーフィング(smurfing)
- 取引の速度(transaction speed)
- 携帯電話の共有と共同利用(phone pooling and delegation)
- サービス提供者に対する規制(regulation of providers)
これらのリスクを、携帯電話を利用する金融サービスに固有のリスクとして整理したのが次の図です(p. 13)。
さらに、これらのリスクを削減するための手段として、以下が提案されています(pp. 23-25)。
- 革新的なKYCプロセス
- 取引額の制限やしきい値の設定
- 二重・三重の本人認証
- 顧客のプロファイリング
- 金融取引がおこなわれる経路の特定
- 内部統制の強化
4章はFATFの勧告をモバイル金融サービスに適用する内容で、以下の通り、4つのリスク要因に対応する勧告の番号が整理されております(p. 41)。
お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、本ワーキングペーパーは、昨年紹介させていただいた世銀による書籍の事実上の前編であり、著者にも重複がみられます。
世銀『モバイルマネーを金融犯罪から守る――グローバルな政策上の課題と解決策――』
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160710/1468158932