Jトラスト「平成27年3月期 決算短信 」

ノンバンクであるJトラスト社の最新の決算短信にて、ブランチレスバンキングが言及されています。


平成27年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (PDFファイル)


同社は、2014年11月、インドネシアムティアラ銀行の99%の株式を取得、連結子会社としており*1、現地で商業銀行の経営を担っています。

連結ベースのバランスシート(pp. 12-13)を見ると、銀行業における貸出金や銀行業における預金が前期との比較で飛躍的に増えており、東南アジアを中心とする海外事業セグメントに占めるムティアラ銀行の大きさが読みとれます。


インドネシアでの顧客の中心は中小企業や個人とのことで、そうしたリテールの顧客基盤を拡大し総合的な金融サービスを提供していくためのチャネル多様化や利便性向上を目的に、ブランチレスバンキングを強化していく方針であるようです。

銀行に固有の業務である預金・為替・融資以外のサービスの拡充にあたっては、Jトラスト社が国内を中心にこれまで培ったノンバンク事業のノウハウを活かすことができる、という判断があるのかもしれません。

今後は、経済規模の拡大とともにインドネシアで急速に成長しつつある中小企業及び給与所得者層に対して各種ローン(オートローン及び住宅ローン含む)、カードサービス、為替等を含む総合的な金融サービスを提供し、またそれらを柔軟かつ迅速に実現するためのコアバンキングシステムの更改や顧客層の裾野拡大のためのチャネル多様化・利便性向上を目的とした法人・個人向けのインターネットバンキング・モバイルバンキングやブランチレスバンキングへの取組みなどのITインフラへの積極投資を実行するとともに、マルチファイナンス会社(主にオートリース)に対する卸金融や、マルチファイナンス会社と協業して直接個人へリースサービスを提供することにより貸付残高を増加させたり、グループのネットワークを活かした付加価値の高い金融サービスを提供することにより海外からの預金や貸付残高を増加させるといった事業展開を通じて、ムティアラ銀行の再生に向け積極的に取り組んでまいります。 (p. 10)


大手邦銀を含め、開発途上国で実地にブランチレスバンキングの経営に携わる日系金融機関には前例がなく、Jトラスト社が正真正銘の最初であると思います。

今後、アニュアルレポートなどで詳しい情報が開示されれば、日系企業がビジネスとして取り組む価値があることやその実態がよりはっきりするでしょう。

個人的にインドネシアは訪れたことすらなく、各種メディアで見聞したことをまとめているだけですが、日本人の方が現地のマーケットを知るために記事を少しでもお役に立てれば幸いです。


インドネシアのブランチレスバンキング
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20131020/1382264248

pwcインドネシアの銀行業に対する意識調査2013」
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20140915/1410778018

インドネシアのブランチレスバンキングをめぐる規制環境
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20150208/1423396622

Helix Institute「代理店ネットワークに対する調査――インドネシア編(2015年)」
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20150301/1425180199

*1:プレスリリースはこちらでご覧になれます。 http://www.jt-corp.co.jp/wp/wp-content/uploads/2014/09/H26091201.pdf