bi-bancarisationについて
昨年末に『資金移動のコストを減らす』を書いたときから気になっていたbi-bancarisationという言葉の意味を調べてみました。
以前の記事で「銀行取引の拡大」としておいたbancarisationにbiという接頭辞がついた単語で、「双方向に銀行取引を広げていく」程度の意味をもつ言葉のようです。
日本人にとって分かりづらいのは、この言葉が主としてフランス文化圏の移民による国際的な送金の文脈で用いられることでしょうか。
北部(Nord)としてのフランス本国に対し、アフリカにおける旧植民地諸国は南部(Sud)に位置し、人やモノやお金が往来する大きな軸をなしています。
元の国(le pays d’origine)と居住国(le pays de résidence)は南北に隔たっており、片方の国だけでサービスを受けるだけでは国境をまたがる移民のニーズは満たされず、どちらの国をも対象とした、双方向の銀行サービスの拡充(la bi-bancarisation)が必要になるということのようです。
フランス開発庁(AFD: l’Agence Française de Développement)が2007年に設立した「海外送金コスト観測所」(l’Observatoire des coûts d’envoi d’argent à l’étranger)という組織は、「コストの透明性と送金方式に関するよりよい知識をうながす」という理念のもと、ウェブサイトで様々な情報を提供しております。
当然のように、ファイナンシャルインクルージョンや金融イノベーションの活用などの話題も押さえられていますね。
- La bibancarisation : un outil au service du développement du pays d’origine
- Séminaire panafricain : Bi-bancarisation et inclusion financière
http://www.envoidargent.fr/content/seminaire-panafricain-bi-bancarisation-et-inclusion-financiere
- Séminaire panafricain : Mobile-banking et plateforme Nord-Sud
http://www.envoidargent.fr/content/seminaire-panafricain-mobile-banking-et-plateforme-nord-sud
移民の存在のため、途上国における銀行利用の拡大といえばまず国際送金が想起されること、移民の地理的な分散(la diaspora)に対応するべく、2国間はおろか3国間の銀行サービスの拡充(la tri-bancarisation)まで議論の対象となっていることがとても興味深く感じられました。
個人的にフランスに行ったときに、アフリカや移民の存在感の強さは肌で感じていたのですが、金融サービスの展開を見守るうえでも、このような社会的・文化的な背景への配慮が重要であるようです。