『アフリカのブランチレスバンキング――銀行を利用できない人々に到達する――』
iVeriという企業によるレポートをご紹介いたします。
Accessing the Unbanked: Branchless Banking in Africa(PDFファイル)
アフリカに固有の事情を踏まえながら、銀行がブランチレスバンキングを実施するうえで検討すべきことが端的にまとめられています。
全18ページと短く、初見の方にブランチレスバンキングの概要をひととおりつかんでいただくのに有用なレポートであると感じました。
冒頭で、アフリカで銀行業が発展する支障となっている要因が挙げられています(p. 3)。
- ・遠距離と人口密度の低さ
- ・サービスのコストに対する収入の低さ
- ・とりわけ銀行業と金融に対する教育の低さと無知
- ・信用履歴(credit history)の欠如
- ・お粗末なプロダクトとチャネルのデザイン
- ・提供されるプロダクトの幅の狭さ
潜在的な顧客に対するチャネルとして検討されるのは次のもので、長所と短所が分析されています(pp. 4-5)。
- ・支店
- ・携帯電話
- ・オンライン
- ・ATM
- ・移動式支店(mobile branch)
- ・代理店によるサービス提供(agency banking)
成長を促進し新たな顧客を獲得するため、銀行が考慮すべき要因とみなされているのは以下の通りです(pp. 8-9)。
- ・市場に到達するまでの時間(time to market)
- ・主要な目標
- ・アクセシビリティ
- ・ITインフラ
- ・顧客の認証(validation)
- ・機動性(mobility)
- ・費用効果
- ・効率性
- ・銀行にとっての利用しやすさ
- ・顧客にとっての利用しやすさ
11ページ以降は、移動式支店(mobile branch)として機能する代理店側のリモート端末を銀行システム本体と安全に接続させるMicrobank+という自社の製品が宣伝されています。
銀行・支店・代理店間の勘定システムの同期は実務上の難易度が高いことが予想されますが、搭載されている技術の新しさや、アフリカの奥地でもちいることを意識した機能の細やかさに感心させられました。
いくつかを抜きだしておきます。
実現されるサービス
- ・口座開設
- ・現金の引きだし
- ・預金
- ・資金移動
機能
- ・指紋による生体認証(biometric verification)
- ・顧客の写真や証拠書類など、デジタル画像を保存するためのカメラとスキャナ
- ・通信の冗長性を確保するためのデュアルSIMの搭載
- ・農村部でも問題なく動作するバッテリによる電源供給
銀行にとっての利益
- ・支店やATMを開設する5%から10%のコストで、インフラの乏しい遠隔地に全く新しい顧客の拠点を開設することができる