「ケニアの通貨革命から学べること――途上国で急速に広がるモバイル・マネー」

ダイヤモンド・オンラインに掲載された日本語の記事で、ブランチレスバンキングが取りあげられています。


ケニアの通貨革命から学べること――途上国で急速に広がるモバイル・マネー|通貨革命か、それとも虚構か?「ビットコイン」を正しく理解する


ビットコインを解説する連載で、通貨革命の一例としてケニアのM-PESAが引きあいに出され、銀行業におけるイノベーションの真価が論じられています。

 現在のITの水準を考えれば、銀行サービスを利用するのに、いちいち銀行支店に出向かなければならないのが、そもそもおかしいのである。日本を始めとする先進国では、至るところに銀行支店があって、不便さをあまり感じないから使っているだけのことだ。
 ダイレクトバンキングのほうが優れているのだから、銀行支店網が発達していない発展途上国では、銀行システムは、早晩、エムペサのようなブランチレス・バンキング方式になるだろう。つまり、銀行の支店が全国津々浦々に普及するというビジネスモデルを飛び越えるだろう。


研究会の設立当初からお伝えしているとおり、代理店や携帯電話やATMなどの代替的な経路(alternative channels)によって、開発途上国を中心とする銀行の支店が進出していない広大な地域に金融サービスを届けていくことに、ブランチレスバンキングの意義があります。

ビットコインは、まだクリティカルマス(臨界量)には達していない。利用が進んでいるアメリカにおいてさえ、そうである。
 ただ、どのような指標でネットワーク効果を見るかが重要だ。すでに述べたように、エムペサの場合、金額ベースで見ればウエイトは小さいが、利用者数で見ればすでにクリティカルマスに達しており、人々の生活を変える段階に達している。
ビットコインも全体の額で見れば経済全体でのウエイトは微々たるものだが、マイクロペイメントや国際送金など、特定の分野で見れば、比較的早くクリティカルマスに達する可能性がある。


これまで貧困層に対するサービス提供という開発上の効果を中心にブランチレスバンキングを紹介してきましたが、通貨革命という言葉がもちいられているとおり、金融のイノベーションという観点からもっと風呂敷を広げることができることができるのかもしれません*1


記事を書かれた方の著作には何冊もあたったことがあるのですが、そのインパクトの大きさに対する示唆をふくめ、経済学のバックグラウンドからブランチレスバンキングに着目した考察として、非常に興味深いものと感じました。


ファイナンシャルインクルージョン・ビットコイン・電子貨幣 - ブランチレスバンキング研究会


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*1:記事を読みながら思いついた程度のアイデアですが、たとえばSuicaの普及によって駅の改札や小額決済のあり方は非常に大きく変わったように感じられます。『Suicaが世界を変える JR東日本が起こす生活革命