プライベートエクイティと途上国開発 インドを事例として

ライブドア事件や、映画にもなった小説『ハゲタカ』を通じ、投資銀行やファンドが企業再生や事業再生の案件を手がけていることが広く知られるようになりました。

M&Aをはじめとする金融のノウハウは、単なるお金儲けのみならず、投資先の企業を成長させ地域の経済そのものを発展させるうえで重要な意義を持っています。

今回の記事では、「お金も出すが(経営に)口も出す」プライベートエクイティ(private equity)というビジネスモデルが途上国開発のうえでどのように機能しているのか、インドを舞台に紹介させていただきます。


はじめにお伝えしたいのは、プライベートエクイティがインドをはじめとする中興国・新興国に広く進出しているという事実です。

開発途上国には、日本やアメリカのような成熟市場にはみられないビジネスの環境と、独特のリスクに相応したチャンスがあります。先進国発祥の投資ファンドがこうした国々に向かう理由は、そこで大きな収益を見込むことができるからです。

先進国からの投資が特に顕著にみられるのがBRICs*1の一翼を占めるインドであり、プライベートエクイティの格好の進出先となっております。

営利企業のみならず、世銀をはじめとする国際金融機関も、インドにおけるプライベートエクイティ投資に大きな期待を寄せているようですね。


具体的な例をひとつ挙げると、Warburg PincusというファンドがBhartiという通信事業者に投資をしていた案件があります。

1999年にはじめてWarburg Pincusと関係をもったBhartiは2002年にIPOを果たし、上場企業になってから株価を3倍以上に上昇させたそうです。

2010年になって、Bhartiは、アフリカでブランチレスバンキングを展開するZainという通信事業者の一部を買収することになります。

その案件には、Zainの財務アドバイザーとして、スイスの投資銀行であるUBSがついていました。


プライベートエクイティや外銀絡みのもので、ブランチレスバンキングに近い金融セクターや通信セクターにおける案件には以下のものがあります。

景気の影響を受けやすい業界とはいえ、金融の技巧と高い経営の手腕をもとに企業の価値を高める(ファンドにとっての収益性を高める)プライベートエクイティのビジネスモデルは、開発途上国の経済の発展のために有用であるようです。

  1. プライベートエクイティ開発途上国でも経済成長を促すために利用されている。たとえば、いまや世界で最も急速に成長しているインドのモバイル・テレコミュニケーション市場の開発では、プライベートエクイティが重要な役割を果たした。2004年に中国の深圳開発銀行がニューブリッジ・キャピタル(訳注:アメリカの投資会社)に18%の株式を売却したのも、まさに同じ考えから出たことだ。発展途上世界では民間企業のみならず、企業からの教訓を現在抱える経済問題に適用したいと考えている政府にとっても、プライベートエクイティが1つの効果的手段となっているのだ」(『プライベートエクイティ 6つの教訓』, p.28)