世銀『モバイルマネーを金融犯罪から守る――グローバルな政策上の課題と解決策――』
世界銀行が2011年に出版した書籍をご紹介させていただきます。PDF版を参照しました。
Protecting Mobile Money against Financial Crimes: Global Policy Challenges and Solutions(PDFファイル)
本としての構成は以下の通りです。
1. モバイルマネーの取引フロー分析
2. リスク評価とリスク削減手法
3. モバイルマネーのリスク管理フレームワーク
4. モバイルマネー市場を規制する国々のためのAML/CFT政策ガイダンス
A. 金融包摂とAML/CFT規制遵守の相互作用
B. モバイルマネーの成長のポテンシャル、現在の状況、成功要因
C. 顧客確認(CDD)義務とモバイルマネーサービス
D. モバイルマネーに特有の報告義務
冒頭で、金融包摂の改善がいかにAML/CFT体制の強化に寄与するかを解説する図が掲載されています(p. 5)。
この整理のもと、リスクにもとづき(risk-based)均整のとれた規制(proportionate regulation)の実施が各国の当局に求められています。
金融完全性(financial integrity)を担保するうえでのモバイルマネーに特有のリスクとは、以下の4つです(p. 33)。
- 匿名性(anonymity)
- 秘匿性(elusiveness)
- 迅速性(rapidity)
- 不十分な監督(poor oversight)
こうしたリスクに対処しつつ、モバイルマネーを金融包摂の拡大に活用するための世界各国の取り組みが紹介されています。
ブランチレスバンキングは随所で取り上げられており、顧客に対するアウトリーチの大幅な拡大を前提に、代理店やテレコムに対するリスク管理のあり方がしめされています。
個々の論点をひとつだけ挙げると、ホットラインの開設(p. 118)など、非常に細かな点まで提言がなされています。
専門的な内容ではありますが、モバイルやフィンテックによる金融犯罪対策は非常にホットな領域であり、途上国のファイナンシャルインクルージョンに密接に関わるという意味でも、目を通してしていただく価値はあると思います。