GSMA「国境を越えるモバイルマネー――西アフリカの新たな送金モデル」

GSMAが先月公開したレポートをご紹介いたします。


Mobile money crosses borders: New remittance models in West Africa(PDFファイル)


WAEMU(西アフリカ諸国経済共同体)における先進的な事例として、コートジヴォワール・マリ・セネガルブルキナファソで事業を営むふたつの通信事業者の取り組みが解説されています。


現在における西アフリカのモバイルマネーによる国際送金の流れを地図上にプロットしたのが次の図です(p. 8)。域内の経済大国であるはずのガーナがすっかり素通りされていますね…。



フランス系の通信事業者であるOrangeが、実験的にサービスを展開する市場としてコートジヴォワール・マリ・セネガルを選んだ理由として、次の6つが挙げられています(p. 10)。

移民や貿易により域内の人やモノの行き来が活発であることに加え、通貨がひとつであるために銀行の外国為替(forex: foreign exchange)を利用する必要がないなど、クロスボーダーの送金が商業ベースに乗るための社会的・経済的な(socio-economic)条件が揃っていることがうかがえます。


現在のところ、高額かつ安全でないインフォーマルな送金の利用を強いられている地理的に離散した(diaspora)コミュニティをターゲットとするため、テレビやラジオやバスの停留所で宣伝を出すなどのマーケティングがなされているそうです(p. 12)。

さらにOrangeは、提携銀行を通じ、モバイルマネーの拡大の前提となる事業の認可を複数の中央銀行に打診しているといいます(p. 15)。多国籍企業であるフランス系の通信事業者とローカルな中央銀行のパワーバランスはどうなっているのでしょうか。


個人的にきわめて面白く感じたのは、フランスにおいて、Orangeが国際送金サービスの開始を2015年に予定していることです(p. 15)*1

繰り返すまでもなく、旧宗主国であるフランスは西アフリカ諸国に対する最大の送金元であり、大陸間のクロスボーダー送金市場の取り込みを意図するOrangeにとって、これは戦略的に重要な動きであります。


ここでは割愛しますが、16ページ以降ではMTNの取り組みも紹介されています。”Send money home”のキャッチコピーのもと、相互運用性の確保や収益モデルの構築やプライシングなど、事業を軌道に載せるために様々なことが模索されているようですね。

*1:まだ文書として公にはなっていないようですが、社長のスピーチはこちらからご覧になれます。http://www.dailymotion.com/video/x26j1k0_le-replay-du-show-hello-2014_tech