GSMA『口座間の相互運用性――モバイルマネーの仕組みを相互に利用できるものにする』
GSMA Mobile Money for the Unbankedによるレポートを紹介いたします。
A2A Interoperability: Making Mobile Money Schemes Interoperate(PDFファイル)
本ブログで幾度となくとりあげている相互運用性(interoperability)に焦点を当てたレポートであり、異なる銀行や通信事業者の口座間(A2A: account-to-account)で、モバイルマネーの決済を可能にするための仕組みが論じられています。
モバイルマネーに相互運用性が確立されることで一種のネットワーク効果の発生が予測され、こうした効果が上手く作用すれば、フォーマルな金融サービスの利用は増加し、ファイナンシャルインクルージョンの引き金となるとの展望がのべられています。
3章では、銀行と通信事業者を相互に接続する方式や、決済をになう自動資金決済センタ―(ACH: Automated Clearing House)の立ち位置を、概念的なレベルで6つの図式として提示しています。たとえばこのようなものです。
続く4章では、どの図式を採用するのが望ましいかを判断するための基準として、以下の8つが提出されます(p. 23)。
- リスクの影響
- 実行するうえでの複雑さ
- 処理のためのコストの影響
- 規制上の枠組み
- 契約上の枠組み
- スケーラビリティ
- ユーザーエクスペリエンス
- 市場に到達するまでの時間
よくあるモバイルマネーに対する調査・分析とは異なり、特定の地域やサービスを対象とせずに概念的な図式を論ずるレポートですが、システム面に偏りすぎず、規模を広げていくためのマーケティングや規制の観点にも配慮しているところが優れていると感じました。