デジタル時代のマイクロファイナンス

MicroSaveのファウンダーに対するインタビューの動画をご紹介いたします。



短い動画ですので、ぜひご覧いただきたいのですが、インタビューの内容はこちらの記事に短くまとめられております。


Fintech or Die: Five Ways Microfinance Can (and Must) Respond to the Digital Age
http://nextbillion.net/fintech-or-die-five-ways-microfinance-can-and-must-respond-to-the-digital-age/

世銀『携帯電話を利用した金融サービスの完全性』

世界銀行のワーキングペーパーをご紹介いたします。


Integrity in Mobile Phone Financial Services(PDFファイル)


2008年の段階で、携帯電話を利用した金融サービスは、ユニークな経済開発上のポテンシャルを持つものと認識されておりました。

他方で、当初からマネーロンダリングやテロ資金供与への悪用が懸念されており、モバイル金融サービスがそうした金融犯罪に使われてしまうリスクを削減するための手段を提示したレポートです。


AML/CFT上、携帯電話を利用する金融サービスには以下のリスクがあります(pp. 11-13)。

  • アイデンティの不明(unknown identity)
  • 偽造ID(false identification)
  • スマーフィング(smurfing)
  • 取引の速度(transaction speed)
  • 携帯電話の共有と共同利用(phone pooling and delegation)
  • サービス提供者に対する規制(regulation of providers)


これらのリスクを、携帯電話を利用する金融サービスに固有のリスクとして整理したのが次の図です(p. 13)。


さらに、これらのリスクを削減するための手段として、以下が提案されています(pp. 23-25)。

  • 革新的なKYCプロセス
  • 取引額の制限やしきい値の設定
  • 二重・三重の本人認証
  • 顧客のプロファイリング
  • 金融取引がおこなわれる経路の特定
  • 内部統制の強化


4章はFATFの勧告をモバイル金融サービスに適用する内容で、以下の通り、4つのリスク要因に対応する勧告の番号が整理されております(p. 41)。


お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、本ワーキングペーパーは、昨年紹介させていただいた世銀による書籍の事実上の前編であり、著者にも重複がみられます。


世銀『モバイルマネーを金融犯罪から守る――グローバルな政策上の課題と解決策――』
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160710/1468158932

GIABA「ECOWASにおけるAML/CFTと金融包摂」

GIABAによる調査レポートをご紹介いたします。


EXAMEN DE LA SITUATION DE L'APPLICATION DES MESURES DE LUTTE CONTRE LE BLANCHIMENT DE CAPITAUX RELATIVE A L'INCLUSION FINANCIÈRE AU SEIN DES ETATS MEMBRES DU GIABA(PDFファイル)


ECOWAS(CEDEAO)西アフリカ諸国経済共同体の略称で、西アフリカにおける金融包摂の現状と課題が描かれています*1

AML/CFTとタイトルに入っておりますが、専門的な内容は3章が中心です。


CGAPの文献を参照しながら、金融包摂を拡大するための西アフリカに特有の課題(défis)が整理されております(pp. 20-24)。

  • 本人確認のインフラの制限
  • 限られた政府の能力
  • フォーマルな金融機関による厳格な適用
  • インフォーマルな金融サービスの範囲
  • 国際的なパートナーと市場との連関


大きく扱われてはおりませんが、携帯電話やブランチレスバンキング(banques à distance)を肯定的に評価しています。


37ページ以降のアペンディクスでは、国別に2014年1月当時の状況が描かれています。

国によって濃淡はありますが、銀行やMFI以外の金融インフラはほとんど整備されておらず、金融セクター全体がまさに発展途上にあるようです。


付せんを立てた箇所は以下の通りです。

  • ECOWASの成人のうち、金融サービスにアクセスできるのは20%のみである(p. 4)
  • 西アフリカの金融セクターの主要な指標(p. 38)

*1:2ページの目次にはじまり、全編を通じて、校正前のドラフトのようなところがあることにはご注意ください。

2016年のエントリまとめ

2016年は、計49本の記事を投稿させていただきました。昨年と同様、3つの切り口から振り返りたいと思います。

あえて網羅的なリストにはしておりませんので、ご興味を持たれた方は、1本ずつ一年の軌跡を辿っていただければ幸いです。

1週間に1回しか更新しないブログで、これだけ多様なテーマを扱うのにはそもそも無理があり、分けたほうがいいと感じております。


・コンサルファームによるレポート
Accenture「インクルーシブなバンキングを目指すいくつもの理由」(2/14)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160214/1455450894


KPMG「金融サービス業界が2016年に直面する10の主要な規制上の課題」(2/28)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160228/1456659717


「革新的なバンキングの経路は規模の縮小でいかにコストを減らすか」(3/6)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160306/1457268429


EY「女性へのエンパワーメント:ファイナンシャルインクルージョンに対する障壁を取り除く」(3/27)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160327/1459076957


PwC「いかにフィンテックが金融サービスを方向づけるか」(4/24)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160424/1461501395


Accentureフィンテックと進化しつつある展望」(5/9)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160509/1462720171


McKinsey「インターネットにつながった自動車の生態系に対応する保険会社」(6/1)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160601/1464790691


BCG「貿易金融におけるデジタル革命」(9/19)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160919/1474291425


McKinsey「デジタルファイナンスがいかに新興経済の成長を促進できるか」(10/9)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20161009/1476015425



・公的機関による文書
de-riskingに関する文献(1/17)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160117/1453012121


ADB「フィンテックで金融包摂を促進する」(1/24)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160124/1453639547


GSMA「モバイルマネー業界の動向 2015年版」(3/13)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160313/1457855022


GPFI「グローバルな基準設定機関と金融包摂:展開しつつある展望」(4/3)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160403/1459686456


BCBS「効果的な銀行監督のための主要原則を金融包摂に関連する金融機関への規制と監督に適用するためのガイダンス」(4/17)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160417/1460892119


ADB「太平洋のデジタル金融サービス」(5/4)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160504/1462347722


CGD「金融包摂と金融完全性のバランスを保つ」(5/15)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160515/1463318544


世銀『モバイルマネーを金融犯罪から守る――グローバルな政策上の課題と解決策――』(7/10)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160710/1468158932


CPMI・IOSCO「金融市場インフラのサイバー攻撃耐性に関するガイダンス(7/31)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160731/1469937496


IIF・CFI・ACCION「金融包摂のビジネス−−新興市場の銀行からの知見−−」(8/14)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160814/1471181742


GSMA「モバイル保険・貯金・与信レポート 2015年版」(8/21)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160821/1471769071


IIF「金融サービスのRegTech――コンプライアンスと報告の技術的ソリューション」(9/4)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160904/1472993688


ケニア中央銀行総裁「サブサハラアフリカの金融包摂」(9/11)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160911/1473598882


CGAP「預金保険とデジタル金融包摂」(10/16)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20161016/1476619415


世銀・ACAMS「De-riskingについての会談」(10/30)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20161030/1477833260


Correspondent bankingとde-riskingを知るための文献一覧(11/13)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20161113/1479035950


CGAP「WAEMUにおけるデジタルファイナンス」(11/20)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20161120/1479646272


GPFI「デジタル金融包摂のためのG20のハイレベル原則」(12/4)http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20161204/1480854668


・フランス語に関連する記事
Orange Moneyによる国際モバイル送金(7/3)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160703/1467553395


Helix Institute「代理店ネットワークに対する調査――セネガル編(2015年)」(7/18)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160718/1468821436


ソシエテジェネラル、アフリカのフィンテックTagpayに出資(7/24)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160724/1469367718


コートジボワールのカカオ農家のためのデジタルファイナンス(8/28)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160828/1472389584


Afrimarket、1,000万ユーロの出資を受ける(9/25)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20160925/1474806046


Orange、モバイルマネー事業のリスクとコンプライアンスを統括する部署CECOMを設置(10/2)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20161002/1475412966


IFAD・世銀「資金移動と金融包摂」(11/7)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20161107/1478520118


Innogence Consulting「モバイルマネーの市場とアクターとトレンド」(12/11)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20161211/1481459504


フランスのフィンテックLemon Way Africa(12/18)
http://d.hatena.ne.jp/branchlessbanking/20161218/1482064660

EIU「グローバル・マイクロスコープ2016」

エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによるレポートをご紹介いたします。


Global Microscope 2016: The Enabling Environment for Financial Inclusion(PDFファイル)


本年の冒頭に紹介させていただいたレポートの2016年度版で、あわせて読むことで1年間の変化が見えてきます。


今年のランキングは次の通りで、コロンビアがペルーと並び、1位に輝きました(p. 10)。


ランキングの指標のひとつである政府の支援に関して、de-riskingと顧客保護が目下の課題として言及されています(p. 18)。

西アフリカの国々はあまり登場しませんが、ガーナを取り上げた箇所(pp. 41-42)では、中央銀行Bank of Ghana)がドラフトした預金保険法案が議会で審議されたことが記載されています。

フランスのフィンテックLemon Way Africa


フランスのフィンテックLemon Way Africaをご紹介いたします。


Lemon Way Africa
http://lemonwayafrica.com


セネガルダカールに子会社を設立し、西アフリカや中央アフリカのフランス語圏で以下のサービスを展開しようとしています。

  • Lemon Money(モバイル決済・資金移動)
  • Lemon Cagnotte(オンラインの共同基金積立)
  • Lemon Funding(クラウドファンディング
  • Lemon Market(オンラインで購入した商品の配達)


これらのサービスの提供を通じて、銀行の利用率は低いが携帯電話の普及率は高いアフリカで、金融包摂や銀行取引の拡充を促進することを理念として掲げています。


西アフリカと中央アフリカにはそれぞれ共通通貨と経済連盟があり、多くの国がフランス語圏です。

  • 西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)
  • 中部アフリカ経済通貨共同体( CEMAC)


#Afrique – Destination Afrique pour la Fintech française Lemon Way
http://techfoliance.fr/afrique-destination-afrique-pour-la-fintech-francaise-lemon-way/

Paiement mobile : la fintech Lemon Way mise sur l'Afrique
http://www.cbanque.com/actu/56680/paiement-mobile-la-fintech-lemon-way-mise-sur-afrique

Tech-Innovation - Lemon Way Africa : la fintech s'acclimate à l'Afrique
http://afrique.lepoint.fr/economie/tech-innovation-lemon-way-africa-la-fintech-s-acclimate-a-l-afrique-22-04-2016-2034184_2258.php

Innogence Consulting「モバイルマネーの市場とアクターとトレンド」

Innogence Consultingという仏系コンサルティングファームが公開しているレポートをご紹介いたします。


Mobile Money: Marché, Acteurs et Tendances
http://www.slideshare.net/LandryDJIMPE/mobile-money-march-acteurs-et-tendances


21ページのプレゼンテーションで、アフリカのモバイルマネーの状況が簡潔にまとめられております。

スライド20では、モバイル決済の課題として、銀行が広くは利用されていないことに加え、顧客の現金を好む性向が挙げられています。


同ファームは、アフリカのイノベーションに特化したプラットフォームInnogence Pulseを運営しています*1


Innogence Pulse
http://www.innogencepulse.com

*1:この記事を書いている時点ではメンテナンス中だったため、残念ながら内容は確認できておりません。